ヤマグチさんの電話

仕事用の携帯電話が鳴るたびに一瞬ひやっとする。知らない番号ならなおさらかしこまる。よし取引先来るなら来い!と、うんとよそ行きの声で出る。「こちらヤマグチさんのお電話ではないですかね」「ちがいますー」。半年に1度ほど、私の携帯電話にはヤマグチさんを求めて電話がかかってくる。
かけてくるのは主に業務ぽい女性で、実に事務的に「失礼いたしました」と去っていくので特に気に留めていなかった。それがこの年末、もう仕事も納めたわという31日20時に留守電が入っていた。取引先やったらとんでもないことに…とおびえながら留守電を聞くと「あーヤマグチさん?久々にヤマグチさんの声聞きたいと思ったんだけど、ヤマグチさん出ないからさー。正月で息子帰ってきてんだわ、あ、今息子に代わるね」とえんえん続く息子語り。今まで透明だったヤマグチさんが浮き上がってきた。
かけ直したほうがいいかな、と思っているうちに着信履歴は積み重なり、留守電のメモリーも消えてしまった。この間の電話の主から推測するに、どうやらヤマグチさんは初老の男性らしい。あの電話以来、うすーくヤマグチさんの幽霊がひっついているように思う。番号なかに生きてるヤマグチさん、本物もどうか元気でいてね。

あけましておめでとうございます。


旅行というか家族だんらん的な時間を過ごし、実家に帰って31日。気づいたら紅白もサチコ、という時間で2012年があける。テレビっ子の弟に付き合って格付けととんねるずのスポーツ対決を見ながら、去年の正月もこれ見てたなーと思い返す。変わらないことにほっとするような、いきどおるような。
飛行機でペット・サウンズ (新潮文庫)を読んでいた。パーソナルな思いがつまった評論が好きで、偏愛といってもいいくらいの語りにぐっときた。Wouldn't it be nice.ほんまに叶うかわからんけど誰か/何かを思って幸せを願って、ときには裏切られても笑いとばせるような、せつなおもしろい1年にと願う今。

湯たんぽとともに寝たら、寝起きがすっとして機嫌よく出勤できる。一気に冬となり年末へ向けて仕事も追いこみで、わーわーしてるうちにもう半分過ぎていた。こうなると、仕事中のチョコレート摂取率が上がる(休みの日はぜんぜん欲しくないという不思議)。
先週は月食を見に散歩をした。橋まで向かう途中、居酒屋から出てきた団体さんや速そうな自転車で走っていた人らが、そこここで皆足を止めて上を見ている。全然知らない人たちと同じものを追っかけているのがおもしろくて、仲間やと心の中で認定する。
今日は寝起き遅く、昨日ようやっと買ったコーヒー豆で家オレ。靴下買って髪を切りに行き、整えるくらいにしてもらう。あったかくなったらバサッといきたいなー。本屋で『spectator』と『再起動せよと雑誌はいう』を購入、手帳を探しに行くもまた決めきれず帰宅。『再起動〜』読んでたらQuickJapan読みたくなって、EYヨ(ごっつい男前)が表紙のやつをひっぱり出す。2002年か。夜はタラ鍋を食べます。

週末の記録

あわただしい人事異動で、私の教育担当をしてくれている人が転勤になった。会える距離なのだけどもう同じチームじゃなくなるのがさびしい。金曜日は送別会でもつ鍋を食べにいく。鼻水が出てどうも風邪っぽい。

土曜日はのろのろ昼ごろに起き、シナモントースト、オムレツ、オレンジジュースで朝兼昼ごはんにする。歩きついでに遠い方の図書館へ行く。図書館のCDコーナーにあるThe Beach Boysをコンプリートするのが最近の目標。塩田千春さんの本、このあいだ東京でね、展覧会カタログ案内など借りる。帰りにミルクティにする用の紅茶を買って、途中で同居人と集合してもつ鍋のもつを探しに行く。これが、もつって売ってなくて難儀した。夕ごはんは昨日に続いてのもつ鍋(家にて)。おなかいっぱいになって、眠くなっている間に真央ちゃん優勝。

今朝のごはんは余りもんの組み合わせで、玄米、お好み焼き、すいとん入りみそ汁。誰が主役かわからない。選挙に行き、鼻拭く用のティッシュをポケットに入れて散歩。途中で図書館に寄ったら、今日は「Pet Sounds」がある。帰ってロイミ(a.k.a.ロイヤルミルクティー)×2杯、そのために昨日マシュマロを買っておいてよかった。布団をかぶって「歩いても歩いても」を見る。サルスベリがあんなに美しい花を咲かすとは知らなかった。

週末は久しぶりに晴れで、外へ出ようと早起きする。同居人とともに「恋の罪」を見に行く(なんばにて)。満員御礼の劇場。いやー、もう期待通りやってくれてました。「冷たい熱帯魚」を見たときもやけど、カタルシスというか、わーすっきり爽快!って気分になった。という感想を高揚気味で同居人に伝えると、ついていかれへん無理、と大変疲労していた。人間の立ち位置が枠から外れていく、それもひとつの型ではあるけれど、その外れ方が身体を伴って生々しいから腹に落ちてくるのであって。というのは私が女やからそう思うのか。その後カフェ、帰ってフィギュアスケートを見る。
翌日は自然が見たいと下鴨神社へ行く。糺の森って土臭くてすごい好き。出町柳から祇園まで鴨川沿いを歩き、鴨川って生活に寄りそってる川だと思う。楽器したり昼寝したり走ったり、とそれぞれに過ごしてる人を見てるとうらやましくなる。道頓堀川は絶賛濁り中ですわ。帰って今季初のポルテを食べた。

朝から雨で空気がもわんとしていたけど、帰りには空も澄んで満月が見える。今日も今日とて車を走らせ業務。季節柄か、ここ最近毎日のように救急車に遭遇する。年末が近づいている。
昨日はぐっと寒くなって、頭からおでんが離れず、おでん!おでん!と思いながら帰宅。「トーク・トゥ・ハー」を見ながら下ゆでして煮込む。ちょうど、18日から始まるヨーロッパ映画祭でピナ・バウシュの3Dやるんやなーと思ってたところに、冒頭からピナ・バウシュが出てきたのでびっくりした。人恋しい季節にはアルモドバルの映画が合う。
おでんのことは途中忘れていて、完成したときには23時だった。ので、今日もおでんを食べている。2日目は味がしゅんでる。明日の「恋の罪」公開が楽しみで仕方ない。あと月末の選挙もなんかわからんけど楽しみ。

10月に見た映画を記しておく試み。

エンディングノート
休みの日(なんばパにて)。たぶんこの先どこかでハナレグミの「おとーちゃま」っていう声が聞こえたら、それだけで涙腺がゆるむだろう。笑ける場面の積み重ねのなかでも、確実に濃くなってくる死が見えてこわかった。今、すごくよくしてもらっている人が、同じような状況で「余命」と言われてからの人生を生きていることもあって染みた。泣きすぎて映画館でむせた(迷惑)。

監督失格
金曜のレイト(なんばにて)。お客さんは全員ひとりで来ていて、ちっこいスクリーンで見てる感じがよかった。こちらは逆にひとつも涙は出なくて、今やからこそ客観的に見れたのかもしれない。友達が死んだとき、ある人がいなくても世の中は平気に進んでいって、なんて心ないのかと思った。それから、墓参りにいけるまでに5年かかった。不在を認めるってことはそれだけで悲しくてむずかしい。平野監督は今できたんだ、やったね!ってハイタッチしたい気分。

モテキ
土曜のレイト(なんばにて)。すごいわっしょいした気分になる。見たあとはひとりカラオケがしたくなる。

ミッション:8ミニッツ
祝日の17時(なんばにて)。100%席が埋まってた。予告編でがしゃがしゃした映画かと思っていたけど、しみじみした話でよかった。終わった後、「時の流れに身をまかせ」(テレサ・テン)が頭の中で流れ始めた。

その他DVDで/アカルイミライ/イタリア的、恋愛マニュアル/インスタント沼婚前特急茶の味クヒオ大佐リトル・ミス・サンシャインマイ・ブルーベリー・ナイツ/を見たのでした。