洗濯機をまわし始めてから雨が降る。どうしてこうもついてないのと文句をたれているところに、あの人から会いましょうかと連絡。車を運転する横顔は、大勢のなかで見たこの間の顔よりもずっと、あの人らしい。古本屋さんの帰り際、プレゼントにと「血と薔薇」。欲しくても、気分とお財布を考えて買えなかった本だったから嬉しくて、車のなかで早速あける。挟まりものが多く(レコ―ド領収書、論文構成を考えたらしきル―ズリ―フ、目のきりぬき!)、前の持ち主のにおいがぷんぷん。
会うと離れるのがつらくて、何回こんなことを繰り返すのだろうと思う。あの人のにおいが残った部屋でひとり過ごすのは忍びなく、コ―トを着て外へ出る。部屋に戻って鏡を見ると、化粧のとれかけた幼い顔に赤い鼻。なんて情けないのと思わず吹き出す。