相変わらずの日差しに、半分目をつぶりながら歩く。人とすれ違うときの熱を帯びた感じが、まさに夏のそれ。隣に座った瞬間、洗濯ものの匂いがする、それだけでその人のことを好きになれそうな気がする。明暗の差にくらくらして、目をつぶったら少し眠っていた。その間に隣には知らない人が座っている。

知り合いの男の子が、会うたびにTシャツとジーパンにサンダルといういでたち(今日はシガーロスTシャツ)。ヘッドホンを首からさげ、猫背で歩くさまが羨ましくて仕方がない。男の子だったら毎日Tシャツで出かけたい。ヒール靴でなくビルケンで歩き回っていたところ、バカンス気取りかと言われ、いつもより背が低いのでいやだ、けれど足の疲れには代えられない、などといらんことを考えながら歩く。毎日がビーチサンダルならば、どんなに夏が楽しみなことだろう(男の子だったらきっとそうしている)。
バスのなかで酒の肴を読んでいると、どこからかおだしの匂いや芋焼酎の匂いが思い出されて、とてもお腹が空いた。パーマネント野ばらを読み、恋をするということはどうしてこうも悩ましいのかと思う。上海、いいなー。涼しさと湿気とほこりっぽさ、上海という町のことは知らないけれど、なにか思い浮かべるならばまずこの音を思い出す。