椎間板ヘルニアなんよ、と母は言った。電話ごしにも戸惑っている様子が目に浮かぶほど、悲しげな声で。父と同じ病気を、犬までもわずらっていたのだった。力を持てあまして、魚のように跳びはねていたのがよくなかったらしい。犬の腰はもちろん、憔悴しきった母も心配。
たのしいムーミン一家 (講談社文庫)を読む。思慮深そうな発言をする面々のなかで、ムーミンママの気の抜けようがとてもよい。第五章より。
家のなかの片づけをしながら、次に起こるであろうことへの大きなきっかけを「何をするとも考えることなしに」つくったのち、

それから、自分のへやにあがっていって、昼ねをすることにしました。なにしろムーミンママは、雨が屋根を打つ音をききながら昼ねをするのが、とてもすきでしたからね。

そのころ子どものころの思い出をかきつづるムーミンパパは、

ムーミンパパは、ふつうのこどもとはすこしちがっていて、だれにも愛してもらえなかったのでした。大きくなってからも、おなじことでした。あらゆる意味で、おそろしい日々を送ってきたのです。

パパは書きに書きました――ぼくの話を読んだら、だれだってなみだをこぼすだろう、とそんなことを思いながら。そのことがまた、パパを元気づけました。

こうも世界への向かい方が違うのかと、びっくりする。ムーミンママの(ムーミントロールにも引きつがれる)あどけなさは、深刻になりがちなこの深い谷に必要なものなのだなーと思う。